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KUNIMOTO GIRLS’ JUNIOR & SENIOR HIGH SCHOOL

【校長講話】5月13日(水)

2026.05.13

その他在校生

中学生

高校生

皆さん、おはようございます。今日は、詩人の大岡信さんの言葉の力』という文章をもとに、「言葉と人の生き方」についてお話ししたいと思います。

大岡さんは、「美しい言葉」や「正しい言葉」が、初めから決まって存在するわけではない、と書いています。同じ言葉でも、ある人が語ると心に深く響き、別の人が語るとそうならないことがあります。それは、言葉が単なる口先のものではなく、その人の考え方、感じ方、生き方、つまり「人間全体の世界」を背負っているからです。一つひとつの言葉には、その人の人生そのものが映し出されるのです。

このことを、大岡さんは、染織家で人間国宝の志村ふくみさんとの印象的な体験を通して語っています。志村さんは、京都・嵯峨で、草木からいただいた色で糸を染め、織物を作ってこられました。あるとき、大岡さんは、志村さんが染めた美しい桜色の着物を見せてもらいました。淡くやさしい色でありながら、その奥には燃えるような力強さと深い落ち着きが感じられる色だったそうです。

大岡さんは、その色が桜の花びらから作られているのだと思いました。しかし実際には、あの黒っぽく、ごつごつした桜の皮から取り出された色でした。しかも、それは桜の花が咲く直前の、木全体に生命の力が満ちている時期にだけ生まれる色なのです。桜の美しさは、花びらだけのものではありません。幹も、樹皮も、樹液も、根も、木全体が懸命に働き、その命の精髄が花となって現れているのです。

本校では、とてもありがたいことに、志村ふくみさんのお孫様である志村昌司さんが運営される アトリエシムラ のご協力のもと、高校3年生が卒業前の特別授業として草木染を体験させていただきました。また、中学校の教養プログラムでも、この貴重な体験の機会をいただいています。草木染めで植物からいただく色は、実に美しいものです。それを自分の手でいただくと、自然の中にひそむ豊かな力と、見えるものの背後にある世界の深さに気づかされます。本校の生徒の皆さんは、まさに大岡さんの文章に通じる学びを体験しているのです。

大岡さんは、この桜の話と言葉の世界は同じだと言います。一語一語の言葉は、桜の花びらのようなものです。表に現れるのは短い一言でも、その背後には、その人の経験、努力、悩み、喜び、そして人を思う心があります。言葉は、その人の「幹」から咲く花なのです。だからこそ、本当に美しい言葉を使うためには、言葉だけを飾るのではなく、自分の内面を豊かに育てることが大切です。本を読み、人の話に耳を傾け、自然の営みに心を動かされ、自分とは違う考えにも学ぶこと。失敗や悩みを通して成長すること。そうした日々の積み重ねが、皆さんの幹を太くし、やがて優しく、力強い言葉の花を咲かせます。

そして、目に見えているものの奥にあるものにも目を向けてください。美しい花の背後には、見えない幹や根の働きがあります。お友だちの言葉の背後には、その人の思いがあります。社会の出来事の背後には、多くの人の努力や歴史があります。表面だけで判断せず、その奥にあるものを感じ、考えることのできる人は、深みのある人であり、思いやりのある人です。

これから皆さんは、探究活動、校外学習、宿泊研修など、さまざまな学びの機会を経験します。それらは単なる活動ではありません。教科の枠を超えて、本質を見つめ、自分の幹を育てる大切な時間です。本校の校訓や教育の精神も、こうした活動の一つひとつに織り込まれています。

どうか、桜の木が全身で春の色を生み出すように、皆さんも日々の学びと経験を通して、自分の内面を豊かに育ててください。そして、その豊かな内面から、優しい言葉、力のある言葉、真実を語る言葉を咲かせてください。さらに、目に見えるものの奥にあるものを感じ取り、深く考え、思いやりをもって行動できる人になってください。皆さんお一人ひとりが、自分だけの美しい色を育て、豊かな言葉の花を咲かせていくことを、心から願っています。

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