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KUNIMOTO GIRLS’ JUNIOR & SENIOR HIGH SCHOOL

令和6年 国本女子中学校 卒業式校長式辞

2024.03.19

その他校長ブログ

春光天地に満ちる穏やかな日に、卒業式を執り行えますことに感謝いたします。

 卒業生の皆様、ご卒業おめでとうございます。そして保護者様、お嬢様方のご卒業、心よりお祝い申し上げます。コロナ禍の最中も、ご信頼とご協力を賜り、大切なお嬢様方をお預かりさせていただきましたことに、深く感謝申し上げます。

 さて、国本女子中学校では、学年を越えて全員で、芸術、科学、ライフスタイル等、様々な領域でご活躍の専門家と交流する「教養プログラム」を行っております。この授業で、卒業生の皆様と私は、過去3年間を通して、毎週水曜日にお会いしておりました。日本人はもとより外国人の方々にもご来校いただき、その数は、この間延べ25人にのぼります。

 専門家の方々は、普段、大人を対象にお仕事をされており、外国人の場合は、英語でコミュニケーションする必要もありましたので、事前に綿密な打ち合わせを行い、中学生にとって学びやすくなるように工夫しておりました。生徒たちは、事前に、関連文献を読んで予習をし、当日専門家は可能な限りスライドを使ってレクチャーを行い、体験学習、振り返り学習によって、深く学べるようにしました。

卒業生の皆様は、見事に期待に応えてくださり、私は嬉しく思いました。いつも素直な心で、知的に溌剌と学んでいました。専門家の先生方に対しても、積極的に質問し、即興で、率直な感想と心のこもった感謝の言葉を伝えることができました。事後の感想文から、「新たな知識」を得ただけでなく、「もっと学びたい」「将来、私もこんなふうになれたら」と前向きな気持ちになっていることもわかりました。そして何より皆様は、実に伸び伸びと、率直に楽しく語り合い、お互いの発言を尊重して学び合うことができました。和気あいあいと、皆で行ったディスカッション、そして起こしたアクション。例えば、サツマイモを作り、話し合ってレシピを工夫し、美味しく3品も作ってしまいましたね。本当に驚きました。笑顔があふれていましたね。私は、そこに友情そして先輩と後輩の絆を目の当たりにし、とても幸せな気持ちになりました。

 さて皆様は、中学校での思い出を胸に高校に旅立って行かれますが、「教養プログラム」等で目撃した皆様の「言葉の力」を私は皆様の才能だと思い、これからも大切に育んでいただければと願っています。そこで、「言葉の力」について、もう少し深くお話をさせてください。

「教養プログラム」の「草木染」。中学校二年生の国語の教科書に、大岡信(おおおかまこと)さんが書いた「言葉の力」という文章があります。この文章に登場する「京都の嵯峨に住む染織家志村ふくみさん」のお弟子さんである専門家の先生方に「草木染」を教えていただきましたね。国本のキャンパスに生育している、桜、枇杷、百日紅から、絹の布に色をいただいて、茶道の袱紗を作りましたね。

 さて、「色」をいただくために煮詰めたのは何だったでしょう。「花」ではなく、「ごつごつとした樹皮」であったことを覚えておられますか。しかも、「花が咲く直前の頃」でないと「鮮やかな色」にはならなかったことを。大岡さんは、志村ふくみ先生から「桜染め」の「ピンク色」の着物を見せてもらい、このことを知ります。そして「言葉の力」の中で、こう書いておられます。

「春先、もうまもなく花となって咲き出でようとしている桜の木が、花びらだけでなく、木全体で懸命になって最上のピンク色になろうとしている姿が、私の脳裏に揺らめいた。花びらのピンクは、幹のピンクであり、樹皮のピンクであり、樹液のピンクであった。桜は全身で春のピンクに色づいていて、花びらはいわばそれらのピンクが、ほんの先端だけ姿を出したものに過ぎなかった。」そして、大岡さんは、これは言葉の世界での出来事と同じだとも言っておられます。

 「言葉の一語一語は、桜の花びら一枚一枚だといっていい。一見したところ全然別の色をしているが、しかし本当は全身でその花びらの色を生み出している大きな幹、それを、その一語一語の花びらが背後に背負っているのである。」

 つまり、大岡さんは、「ひと」を桜の木にたとえて、「ひと」の「美しい言葉」は、桜の木の全体が懸命になって咲かせている美しい花であり、「ひと」が全身で懸命に生きているエネルギーの一部である、と言っておられる。

 そして、染織家志村ふくみ先生が、自然界から糸に色をいただき、その糸で、精魂込めて布を織って美しい着物を作り、人々を感動させていることに思いを馳せると、私はこう思います。懸命に生きている「ひと」と「ひと」が互いに、花びらを寄せ合い、言葉を紡ぎ合うとき、まるで花から実が成るように美しい布、美しいコミュニケーション、美しい絆が生まれ、そこに「温かい心」が宿るのではないか、と。

 コロナ禍は国々や人々を分断し、収束に向かっている今でさえも、戦争や対立が続いているところがあります。しかし、常に感謝の気持ちを忘れず、前向きでいてください。そして、平和な社会を築きましょう。その鍵となるのは、「ひととひとをつなぐ言葉の力」だと私は思います。皆様は、この能力に長けておられますので、この才能を生かして活躍ください。そして、幸せな人生を歩んでください。

 KAISで学ばれた皆様は、この3年間で英語を使って教科学習をし、少人数制習熟度別クラスで、飛躍的に英語力を伸ばし、立派なバイリンガルになられました。英語は今や国際語。世界のひととひとを繋ぐパワーのある言語ですので、是非、世界平和のために役立ててください。

 最後に、コロナ禍の朝礼で紹介した、私の好きな「ツェーザル・フライシュレン作」」山本有三訳」の「心に太陽を持て」の詩を、皆様の贐に贈り、私の式辞とさせていただきます。

心に太陽を持て。あらしが ふこうと、ふぶきが こようと、

天には黒くも、地には争いが絶えなかろうと、いつも、心に太陽を持て。

くちびるに歌を持て、軽く、ほがらかに。自分のつとめ、自分のくらしに、

よしや苦労が絶えなかろうと、いつも、くちびるに歌を持て。

苦しんでいる人、なやんでいる人には、こう、はげましてやろう。勇気を失うな。

くちびるに歌を持て。心に太陽を持て。

 令和六年三月十六日  国本女子中学校長 豊田ひろ子

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