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KUNIMOTO GIRLS’ JUNIOR & SENIOR HIGH SCHOOL

記念祭展示【中学校 教養プログラム】

2025.10.28

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「今年で6年目を迎えた国本女子中学校の教養プログラム:記念祭に寄せて」
中学生に「本物に触れてほしい」という思いから、多様な分野の専門家の先生方をお招き
し、レクチャーやワークショップを行っていただいています。そして、生徒たちは、毎回
深い学びを得ています。
日本語学者・金田一秀穂先生には、「日本語の世界」というテーマで、日本語辞書の特徴
についてお話しいただきました。字を書くことを習えなかった女性が、息子のために文字
を覚え、手紙を書いたというエピソードも紹介してくださいました。「文字はきちんとし
ていなかったけれど、その言葉はとても素晴らしいものでした。自分の心の底から出てく
る言葉、嘘偽りのない自分の言葉が一番美しいのです。」この言葉を胸に、私たちは「た
とえ拙くても、自分の想いや考えを一生懸命ことばにしよう」と誓いました。
また、ウクライナで戦争が始まり、日本に避難してこられた二人の若い女性から、「戦争
とは何か」についてお話を伺いました。命からがら逃れてきたお二人は、「どこまで話し
てよいのでしょう。怖い思いはしてほしくないのです」と私たちを気遣いながら、戦時下
で撮影された町や生活の写真をいくつか選び、エピソードを流暢な英語で語ってください
ました。私は、戦争のあまりの残酷さに涙をこらえながら通訳をしました。生徒たちも静
かに涙を流していました。茶道室で生徒たちがお茶をお出しした際、「久しぶりに穏やか
なひとときを過ごせてうれしいです」と笑顔を見せてくださったことが、今も忘れられま
せん。
継続してご来校をお願いしているのは、料理家・辰巳芳子先生の「命のスープ」を継承さ
れている対馬千賀子先生、そして染織家・志村ふくみ先生の「草木染め」を普及されてい
るアトリエシムラの志村昌司先生とインストラクターの先生方です。ワークショップのた
びに、「人間は自然に生かされている。自然に感謝して生きましょう」という教えの大切
さを実感します。辰巳先生も志村先生も著作が多く、私たちは先生方の言葉を通して、人
間が本来もつ感覚や可能性について多くの気づきをいただいています。
今回の記念祭の教養プログラムの展示テーマの一つは「リトグラフの世界」でした。教養
プログラムでは、戦後80年を迎え、2人の女性、科学者の猿橋勝子さんと児童文学作家の
角野栄子さんのインタビューから平和について考え、当たり前と思われがちな日常生活や
自由が貴重なものであることを学びました。そして、「私たちにとって平和とは」という
テーマで絵を描き、版画家・角田元美先生と三名の先生方をお招きし、西洋で誕生した石
版技法リトグラフについて学びました。角田先生をはじめとする日本の版画家の方々の研
究により、この技法は日本の木版や紙版へと応用・発展し、今では世界中に広がっていま
す。撥水と親油の化学反応を生かすこの技術は非常に興味深く、同時に難しさもあります

数回の印刷を重ねることでようやく絵が現れるというプロセスを、生徒たちは限られた時
間の中で体験し、版と版画作品の両方を展示しました。版画は、機械で刷れば鮮明な色が
出ますが、人の手で刷ると柔らかく温かみのある色になります。紙、水、油性インク、絵
の具、ローラーなどの道具と対話しながら作品をつくるこの活動は、「命のスープ」や「
草木染め」にも通じるものがあります。角田先生は4年をかけて、日本語と英語による専
門書を執筆され、制作方法をバイリンガルで紹介するYouTubeも公開されています。グロ

ーバルにご活躍されている素晴らしい先生です。
もう一つのテーマは「編み物の世界」でした。東日本大震災の際、気仙沼に毛糸を送り、
編み物で支援を行っていたドイツ出身の梅村マルティナさんとオンラインでお話を伺いま
した。マルティナさんは、震災後に実家から「放射能が危険だから帰国を」と航空券が送
られた際、息子さんたちに「友だちを置いてどこにも行けないよ、ママ。ここが僕たちの
国だから」と言われ、「はっとさせられました。子どもたちは大切なことを教えてくれま
す」と語ってくださいました。その後、マルティナさんは復興支援をきっかけに毛糸の会
社を立ち上げられました。彼女の毛糸は、メリヤス編みでも美しい模様が浮かび上がるユ
ニークなもので、私たちはこれを使って「腹巻帽子」を編みました。編み物が初めての生
徒も多く、最初は毛糸と格闘する日々でしたが、次第に夢中になって編み物に取り組んで
いきました。
記念祭にご来場くださった皆様、作品をご鑑賞くださり誠にありがとうございました。
国本女子中学校・高等学校長 豊田ひろ子

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