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KUNIMOTO GIRLS’ JUNIOR & SENIOR HIGH SCHOOL

2022年度中学校・高等学校入学式:校長式辞

2022.04.08

校長ブログ

最初に式辞の前に皆様にお願いがございます。本日は入学式というお祝いの場ではありますが、コロナ禍のもとで感染し、不幸にもお亡くなりになった方々や、さらには理不尽な戦争や抑圧の犠牲となった人々に謹んで哀悼の意を表し、全員で一分間黙祷したいと思います。着席のままで結構ですからご協力をお願いします。

黙祷。(1分間)

ご協力ありがとうございます。元にお直りください。

(式辞)

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。新緑輝くこの佳き日に、溌剌とした皆さんを新入生として迎えることは、私たち教職員一同および在校生全員にとって大いなる歓びとするものです。心から皆さんを歓迎します。一日も早く国本の雰囲気に馴染んで、有意義な学校生活を送るようにしてください。教職員が力を合わせて、皆さんをしっかりとサポートしていきます。

また、コロナの第6波が収束しないまま、リバウンド傾向が高まる中で、本日は関係各位のご理解とご協力のもと、保護者の皆様にもご参列頂いて、式を挙行する運びとなりました。保護者の皆様、本日は、おめでとうございます。お子様のご入学を心からお祝い申し上げます。お悦びも一入のことと拝察いたします。お子様ひとりひとりが将来の進むべき道を確立できるように教職員一同丁寧に指導して参りますので、ご理解ご協力のほど心からお願い申し上げます。

 さて、新入生の皆さん、世界規模の感染症を意味するパンデミックにまで拡大したコロナは、現在まで、世界で600万人以上もの人々の命を奪ってきました。この世界規模のパンデミックに遭遇した10代の世代は、皆さんが初めてです。それは、たしかに歓迎すべからざる事態と言えます。しかし、見方を変えれば、皆さんの現在の経験は、皆さんにしか成しえない成長と生きる力を獲得する貴重な機会になるのではないでしょうか。

コロナ禍の中で、世界で最も安全安心と言われてきた日本社会の弱点が一挙に露わになりました。

感染爆発の中で、保健所の業務がパンク状態になり、本来ならば助かるはずの命も、病院に行けないまま自宅で亡くなった人々、自分や家族にいつ感染してもおかしくない状況で、休む暇寝る暇もなく働くエッセンシャルワーカーと呼ばれる医療従事者の人々、また、お店の営業時間の制限に伴い、商売が成り立たなくなった人々、とりわけ、突然仕事を失って、生活が困難に追い込まれたアルバイトやパートのいわゆる《非正規雇用の人々》― コロナ禍だからこそ、見聞きするようになったこうした人々の苦労や苦しみや無念さを、同じようにコロナに翻弄される当事者として、皆さんはどのように受け止め、このような事態から何を学びとったでしょうか。実は、それこそ、本当に大事な学びと言えるのではないでしょうか。

 こうした周囲の様々な現象から、学びを手に入れるためには、先ずは、自分自身の素直な感受性をもって向き合い、何よりも自分の頭で考え、自分の言葉で思いを伝えることができる人にならなければなりません。要するに自立した人になる必要があるのです。

自分の頭で考えるためには、自分の意識を縛っているものから解き放たれていなければなりません。ここで聞きなれない言葉をお伝えします。それは《インナーペアレント》という英語の言葉です。日本語に訳すと《内なる親》つまり《自分の心の中に住みついている親》という意味です。ここで言う、《親》とはダブルミーニングで、文字通り、子供に対する《親》のことであり、さらには、《親》に象徴される《社会や世間のルールやモラル》のことを意味しています。これまでは、《内なる親=インナーペアレント》からの指示や命令に忠実に従うことが「よい子 / いい子」とされてきました。皆さんが子供の頃は、親の姿が見えないときでも、心の中に居る親の眼差しを意識したり、その声に耳を傾けたりして、自分の行動を抑制したり縛ったりしていたと思います。今までの成長の目標は、《内なる親》(=インナーペアレント)の指示や命令に忠実に従うことでした。

しかし、自分の頭で考え、自分で判断を下すことができる人になるためには、いつまでも《インナーペアレント》に頼っていては自立できません。国本女子に入学された皆さんにお願いしたいのは、《インナーペアレント=内なる親》からの自立です。これまで《絶対視》していた《インナーペアレント》を《相対化》できるようになることです。これからは、必要に応じて《親や、親に象徴される既成概念や世間の価値観》とは異なる判断や決断をできるようになることが目標です。どんな行動をとるべきか、どんな判断を下すべきか、それを自分の頭で考えて決めてください。これまで従ってきた既成の価値観を相対化することは、その場の空気を読んで、周りに合わせることを求める《同調圧力》の強い日本社会では、自分を失わないためにも特に必要になります。成長のゴールは、まさしく自分で立つ自立した人間になることです。もちろん、むやみに《インナーペアレント》を否定したり、それに反抗したりすればいいと言っているわけではありません。物事を多角的な視点で捉えたり、他人の立場で考えたりすることができるようになってほしいのです。

最後に、《インナーペアレント》からの自立とセットでお願いしたい目標は、《エンパシー》という能力です。これは、想像力を駆使して、他者(ひと)の心の中を推し量り、気持ちによりそうことができる能力を意味します。創立者の有木春来先生が事あるごとに説いていた《他人(ひと)に善かれかし》という教えと同じ内容の言葉です。《他人(ひと)に善かれかし》は、エゴイズムを意味する利己主義とは真逆の《利他主義》を意味する言葉で、国本の教育のバックボーンになっている考え方です。他者を思いやり、進んで手を差し伸べることによってはじめて自分の存在が可能になると考える《利他の精神》や《エンパシー》は、差別や格差がはびこる現代の社会で、私たちが共生し、助け合うための指針となるものです。

皆さんご存知のように、ウクライナでは、理不尽な無差別攻撃によって、数多くの一般市民、とりわけ子供たちの命が奪われる事態が起きています。人道上恕されない蛮行です。しかし、国際社会は、大量虐殺を意味するジェノサイドとも呼べる非人道的な虐殺行為にたいして有効な手立てを講じることができていません。それは、私たちも同様なのですが、国本女子では、先日、生徒たちの自発的呼びかけで、ウクライナの子供たちへのユニセフの募金活動を迅速かつ積極的に行いました。日本の中高生にどんな支援活動が可能であるか、その一端を自らの行動によって果敢に示してくれました。国本女子のエンパシーと行動力を垣間見ることができました。ささやかながらも、微力が無力ではないことを学ぶことができました。

これは、ほんの一例にすぎませんが、国本女子には、皆さんのお手本となる先輩がたくさんおります。お手本=ロールモデルとなる先輩たちにならって、自立というゴールに向かって、日々の授業や部活動に積極的に励んでください。期待しております。本日は本当におめでとうございます。以上で入学式の式辞とさせて頂きます。(以上) (2752字)

                                                   2022年4月8日

国本女子中学校高等学校

校長 坂東 修三

これからの時代に翔ける
生徒の教育を目指して

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